こんばんは!
2月になりましたが、まだまだ厳しい寒さが続いていますね…!
「一月往ぬる二月逃げる三月去る」という言葉にもあるように、
長いようであっという間の真冬。
早く春が来てほしい反面、白い吐息とホットカプチーノをまだまだ堪能したい…とも思ってしまう今日この頃です。
なので今回は、
冬が逃げてしまわないうちに
バニラズきっての冬ソング
「バイバイカラー」をご紹介します!
この曲は4thアルバム「FOOLs」の8曲目に収録されており、日本武道館でもハンドマイクの妖艶なパフォーマンスが非常に印象的でした。
シングル化こそされてはいませんが、YouTubeのコメント欄や武道館DVDのプレビューパーティーで「バイバイカラーが好きすぎる!」と熱いコールを送っていたファンは少なくありません。
今回はそんな人気のナンバー「バイバイカラー」の魅力について語っていきたいと思います!
※すべて私個人の解釈となりますので、ご理解いただけますと幸いです。
🍦リリックとサウンドの巧みな交錯
まず、この曲は
汽車で遠くへ行ってしまう主人公と
その姿を見送りに駅まで来た恋人との
別れのシーンを描写しています。
故郷を離れる、恋人と別れる等はまだ日常であり得そうなシチュエーションなのですが、
ひとつ異なるのはあたかも永遠の別れであるかのように描かれている点です。
動き出す汽車は二人の別れを告げるけど
いいさ
オンリーロンリーガール
できるなら
オンリーロンリーガール
筆を走らせて
冒頭部分の「動き出す汽車」や「筆を走らせて(=手紙を書いて)」というフレーズ。
スマートフォン一本で誰にでも連絡が取れ、航空券一枚でどこにでも行ける現代の世界とはどこか一線を画した、
一旦離れてしまうともう二度と会えないようなひと昔前のアナログ全盛期時代に一瞬にして誘(いざな)われます。
そんな歌詞とは対照的に、
サウンド面ではミラーボールがよく似合うエレクトロニック・ダンスロックナンバーとなっており、こんなエッジの効いた曲も出来ちゃうの?と感服してしまうくらい、「FOOLs」の中でも群を抜いて印象的でした。
そのため「バイバイカラー」は私の中で
サウンド面で功績が大きく、もはや「FOOLs」を代表する楽曲
と言っても過言ではなく、A面シングル顔負けの圧倒的な存在感を放っています。
一時、「FOOLs」アートワークのグラフィックって絶対バイバイカラーに出てくる「憂鬱な二色」だろ!と頑なに主張してた時期もあったくらいなので…(笑)
特にお気に入りなのが、流星群のような(なんだそれ)イントロ。
あのイントロが流れると、ハラハラと夜空を舞い散る粉吹雪と走馬灯のように駆け抜ける汽車の明かりがスピーディーに入り乱れ、夜空に色を付けていくマジカルな光景が瞬く間に脳裏へと映し出されます。
洗練された緻密なドラムサウンドも細かい氷の粒のようで、冬の要素がさりげなく仕込まれているのもこの曲をよりクールに際立たせてますよね。
時代を感じる叙情的な歌詞と、非日常的な雪景色を描いたファンタジックなサウンド。
どの角度から切り取ってもどこか私達の日常から隔絶した雰囲気が漂っており、まるで映写機を使ったフィクション映画の一コマのよう。
なのでどうしても、リスナーが自身の実体験と重ね合わせて共感する歌というより「冬の儚い別れ」を芸術的に描いたアート作品のような位置付けになってしまうんですよね…。
雪とともに溶けゆく恋の儚さが、こんなにも幻想的に見える不思議。
このリリックとサウンドの意外なマッチングこそが、ファンを魅了してやまない最大の理由なのだろうと思います。
🍦そもそも「バイバイカラー」とは
この曲のタイトルでもあり、サビ最大のキーワードでもある「バイバイカラー」。
具体的に何色かは明言されていないため、解釈は人によって異なると思いますが…
私は「バイバイカラー」は実際にある色ではなく、
別れ際のカップルがそれぞれ心に抱くもの(感情、記憶、雰囲気など)が複雑に入り混じった架空のイメージ
を表していると勝手に考察しています。
こうして隠喩的な表現を用いてリスナーの想像に任せるあたりもミステリアスでお洒落ですよね…!
実際この曲には心にある「目には見えないもの」を「色」として表現した抽象的なフレーズが二箇所あります。
❶「憂鬱な二色」:二人の間を渦巻く感情
バイ バイカラー 憂鬱な二色を
夜空で舞い散る雪のように 白で染めるまで
まず一つ目が、「憂鬱な二色」というフレーズ。
ここでの「憂鬱な二色」は、やはり実際にある色ではなく、別れを目前とした二人のネガティブな心境が混ざり合った空気感のことだと推測します。
車窓から彼女を見つめる彼とホームから彼を見送る彼女の間に流れるどんよりとした雰囲気。
個人的には本当に「FOOLs」アートワークのグラフィックのようなマーブル模様のイメージで、雪に覆い隠されて見えなくなるまでゆっくりと渦を巻き、溶け合っていきます。
❷「魔法のトーン」:二人で過ごした記憶の数々
変に混ざり合って 柔肌に刻まれた魔法のトーンを消せない
癒えない 触れないままでいて
そして二つ目が、「魔法のトーン」というフレーズ。
駅に立ちすくむ彼女の最後の姿。
その「柔肌」を目に焼き付けようとすればするほどフラッシュバックするのは、出逢った頃の甘酸っぱい思い出や初めて喧嘩をした時の苦い思い出など、二人で過ごした記憶の数々です。
さらにその「柔肌」が雪に照らされ、皮肉にも別れ際である今に限って格別美しく見えてしまう哀しさ。
「変に混ざり合って」という言葉からも微量の不快感が伝わるように、彼女を見ると美化された二人の思い出が嫌でも蘇ってきてしまう、そんな心苦しいシーンです。
「バイバイカラー」を日本語に直訳すると「さよならの色」となるように、
恋人との最後の別れ際、ある意味今までのどんな時よりも腹を割って相手と向き合える貴重な瞬間を切り取り、
二人の複雑に入り混じる感情とそれに伴う美しい記憶達を、見えない「色」として描き上げる。
この手法は一見さらっと流してしまいそうですが、実際なかなか容易なことではありません。バイバイカラーをバニラズの隠れた名曲へと押し上げている重要なポイントだと思っています。
🍦冷えた言葉が裏付ける確かな恋
先ほど「この歌は実体験と重ね合わせて共感するというより、アート作品のような位置付けで聴いてしまう」という話をしましたが、
そうなってしまうもう一つの理由が
「物語の主人公自身がどことなく冷めているから」
ではないかと個人的には考えています。主人公が物事を一歩引いて見ていたら、そりゃ読者も俯瞰的になってしまいますよね…。
別れの曲にも関わらず、歌詞を順に追っていっても「寂しい」「傍にいて」と未練たらたらな言葉で感情的にわめく場面が不思議なくらいに見当たらないんです。
※歌詞をフルで見たい方はこちら ↓ から
go!go!vanillas バイバイカラー 歌詞 - 歌ネット
動き出す汽車は二人の別れを告げるけど
いいさ
オンリーロンリーガール
できるなら
オンリーロンリーガール
筆を走らせて
「二人の別れを告げるけど いいさ」と独り言のように冷たくあしらっているところ、
そして彼女のことを「愛しい君」などではなく「オンリーロンリーガール」と他人のように形容するところからは、もう何か達観しているかのような、異様に冷静な目線が伺えます。
たまに、別れた後に赤の他人感を強調したくて無表情かつ敬語で話すスタンスに切り替わる人いるけど、それに似た感じなのだろうか…。(笑)
ただ、そんな冷徹な男へと急変してしまった彼にもちゃんと理由があるということが、サビの部分から読み取れます。
バイ バイカラー 憂鬱な二色を
夜空で舞い散る雪のように 白で染めるまで
夜空に舞い散る雪よ。二人じゃどうにもならないこの憂鬱を、いっそのこと白で染めて覆い隠してくれないか。
この二行を分かりやすく噛み砕くとこんな感じではないでしょうか。
降りしきる雪にさえもこのように懇願する様子から、悲痛な思いを隠していたのは実は彼の方ではないか?と思えて仕方ありません。
彼が終始冷徹に見えるのも、彼女の事を好きじゃなくなったからではなく
まだ好きがゆえに現実を直視しようとすると哀し過ぎて堪えられないからだと思うのです。
今ここに在る憂鬱から目を背けるしか自分を保つ方法が無い。
そんな主人公の哀しみは、続く二番でも間接的に表現されています。
変に混ざり合って 柔肌に刻まれた魔法のトーンを消せない
癒えない 触れないままでいて
オンリーロンリーロンリーガール
オンリーロンリーロンリーガール
オンリーロンリーロンリーガール
オンリーロンリービューティガール
躍動感に拍車がかかっていて、一番ゾクゾクするお気に入りのパート。
先述通り「柔肌に刻まれた魔法のトーン」によって美化された二人の思い出が嫌でも甦ってきてしまうのだとすれば、
消さない(無理に忘れようとはしない)
癒えない(風化させない、そのまま残しておきたい)
触れない(でもあえて思い出そう、覚えておこうともしない)
というエフォートレスな言葉の連なりに、彼の思い出との向き合い方、そして抑圧していた本心を垣間見ることができます。
彼女の柔肌の色を「魔法のトーン」と形容するのも、
美しいとストレートに褒めてしまってはまだ未練があるという事実を認めてしまうようなものなので、少々強引に魔法のせいだと主張しているように見えてしまうのです。
そして、まるで雪が一瞬降り止んだようにピアノだけがしっとり寄り添うCメロ部分。
二人で書いた雪文字のメッセージと温かなあなたの左手を
忘れたなんてお世辞にも言えないけど
あの冬の暮れに溶けてと願った
今まで「二人の別れを告げるけど いいさ」「変に混ざり合って」「オンリーロンリービューティーガール」など、距離を感じる冷えきったワードが並んでいた中で
唯一未練を吐露する重要なシーンです。
大好きだったからこそ別れが辛いし、別れが辛いからこそ現実を受け入れたくなくて、表面上はわざと他人のように冷たくしてしまう。
でも本当は彼女を忘れるのも辛いし思い出すのも辛いから、
二人ではしゃぎ合った思い出も、別れ際の憂鬱な空気感も、今はせめて雪の中に閉じ込めて、そのまま永久保存してしまいたい。
冷静沈着な言葉とファンタジックなサウンドの裏には、そんな純粋な愛情からの痛みと哀しみがひそかに隠されているのです。
🍦「なごり雪」のオマージュソング
最後に、
「FOOLs」のリリースとともにバニラズの公式サイトにて公開されたセルフライナーノーツには、この曲の秘話が記されています。
僕はフォークソングが好きだ。
純粋な自分の意思や愛が詰まってるから。
そんなフォークソングに地元の駅を舞台にした一曲がある。
それは「なごり雪」という曲だ。
知らない人はこれを期に是非聴いてほしいのだが、
実はこの曲はなごり雪を今の時代にタイムスリップさせた形で僕なりに書いた一曲。
サウンド面は2010年代以降のUKダンスロック × 歌詞は1970年代の日本のフォークソング。
そんなことが出来るからやっぱり今が一番楽しいよね。
(牧達弥)
Quoted from:FOOLS セルフライナーノーツ|go!go!vanillas (gogovanillas.com)
この事実は私自身けっこう後になってから知ったのですが、
あの昭和を代表する名曲「なごり雪」のオマージュソングだっただなんて…!
こちら ↑ が、イルカさんがカバーした「なごり雪」のライヴ映像です。
私もこの曲が大好きなので、少し意外な繋がりを発見できて感動しました…。
よくよく聴いてみれば、バイバイカラーの「雪降る駅」「恋人同士の別れ」というシチュエーションは「なごり雪」そのものですよね…!
「なごり雪」はもともとフォークグループ「かぐや姫」の楽曲です。メンバーだった伊勢正三さんによって作詞作曲され、1975年にフォークシンガーのイルカさんがカバーしたことにより日本中で大ヒットを記録しました。
以降も様々なアーティストがカバーし、令和となった今でも色褪せない名曲として歌い継がれています。
そして、舞台となった地元の駅についてですが……
大分県津久見市出身の伊勢正三は、過去のインタビューでこう語っています。
「詞の設定は東京駅から出て南に向かうブルートレイン」と。
ブルートレインとは、かつて長距離を走っていた寝台列車のことで、交通機関があまり発達していなかった時代に多くの人が利用していました。
伊勢正三も、ブルートレインに乗って上京してきたそうです。
Quoted from:「なごり雪」歌詞の意味を考察!季節はずれの雪が意味するものとは? | 歌詞検索サイト【UtaTen】ふりがな付
とのことなので、
バイバイカラーも大分県の津久見駅を舞台とした可能性が高いです。
ただ、なごり雪が
男性:東京に残る
女性:汽車に乗って地元へ戻る
のに対し、バイバイカラーは
男性:汽車に乗って東京へ行く
女性:地元に残る
なので、歌詞中の主人公の立場に若干の差異がみられます。
どちらも女性と別れる男性目線の歌なのですが、「なごり雪」は残る側で「バイバイカラー」は去る側なんですね。
交通機関や通信手段が限られており、一旦遠くに行ってしまうと再び会うのが容易ではなかった時代。
雪がしんしんと降り積もる駅のホームでおそらく最後であろう契りを交わす恋人達はどのような心情で旅立ち、また見守ったのでしょうか。
「なごり雪」の世界観を受け継いだ美しくも切ない歌詞には、
牧さんの地元大分への愛と1970年のフォークソングへの敬意が詰まっています。
そんな「時代」を感じさせるセピア色の情景を、現代のUKダンスロック風サウンドで鮮やかに色付けした曲がこのバイバイカラーなのです…!
🍦さいごに
いかがでしたか?
爽やかでハッピーな曲調が多く、夏や朝がよく似合うと言われていたバニラズですが、
バイバイカラーは冬や夜を舞台にした曲でも相変わらず最高だということを世に示した名曲ではないでしょうか。
さらにこの曲は、多くのファンから厚い支持を得ている数少ないB面ソングのひとつ。神戸アリーナツアーの帰りに、ポートライナーで隣に立っていたファンが「バイバイカラーやってほしかったな…」と友達に嘆いていたのも見逃せません。
私も、ところどころにスパンコールのようなほのかな輝きすら感じるファンタジックで先進的なオーラが大好きすぎて、ライヴのイメトレもバッチリ。あとはくるのを待つだけ!楽しみにしています♡
それでは、残りわずかな冬を満喫していきましょうっ!